生け花

ピカソの逸話と簡素な生け花の魅力

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簡素な生け花はパッと見た感じ誰でも出来そうな雰囲気が有ります。

ここでいう簡素な生け花とは、この画像のように花1~3本が壱輪挿しに素直に入っている花の事です。

この簡素な生け花は初心者と熟練者では生けた際に、かなりクオリティーに違いが出るほど魅力的で奥深いのですが、これがなかなか伝わりづらく、何か伝える方法はないかと考えていた時にピカソの逸話に出会いましたので、順を追って御説明させていただきます。

シンプルだから伝わりづらい

簡素な生け花の魅力の伝わりづらさの要因は2つあります。

◆1.見た目がとてもシンプル

本数が少なく省略された簡素な生け花を美しく生けるには基礎や理論構成などが身に付いていて、花一つ一つの動きを見極め、どの部分を活かすかを取捨選択することが重要になってきます。

ですが、実際に一般の方の目線で見れば生け手が取捨選択した後の花を見ることになるので、1~3本切って挿しただけの花と思われてしまうのも無理はないかと思います。

私も初心者の頃は、そのように思っていたので何も習ったことが無い一般の方ならなおさらです。

◆2.花という素材の特徴

1つ目でもお伝えした切って挿しただけと思われてしまう要因にもつながるのですが、花は素材そのものが完成形に近い魅力を持っていて、絵を描く時に使う素材の絵具や彫刻に使う素材の木の塊や石のように素材自体を加工して作り上げるものではなく、花は素材自体がすでに美しく、絵具や木の塊のように元の素材の形が分からなくなってしまうほど大きな変化を加えることは簡素な生け花においては、ほぼ無いので奥深い魅力に気付くことが難しいのです。

余談ですが、このような素材である花の特性を生け花では「花は即(そく)素材である」などと言ったりします。

それでも伝えたい

2つの要因で独特の伝わりにくさがある簡素な生け花ですが

それでも、この素晴らしく奥深い簡素な生け花の世界をなんとか簡単に生け花の経験の無い方にも分かりやすく伝えることは出来ないかと常日頃考えていたところピカソの逸話と出会いました。

ピカソの逸話

ピカソが町を歩いているとピカソの大ファンだという女性に呼び止められました。

その女性は自分が用意した紙に「絵を描いてくれないか?」とピカソに尋ねたそうです。

ピカソは笑顔で答え30秒で小さく美しい絵を描き上げ「この絵の値段は100万ドルです」と女性に言い、絵を渡しました。

女性は「あなたはこの小さな絵を描くのに、たった30秒しかかかっていないのに100万ドル?」と言いました。

その言葉を聞いたピカソは苦笑しながら「お嬢さん、それは違う。30年と30秒だ」と言ったそうです。

たとえ制作時間が30秒でもその結果にたどり着くまでには30年かかっている。

経験者が手掛けたものはどんなにシンプルなものでも手を抜いてさえいなければ制作時間以外にそのことに携わってきた経験が上乗せされていると言うピカソの逸話です。

簡素な生け花と逸話の共通点

初心者の頃に30分で生けたものと10年経験を積んでから30分で生けたものでは当たり前ですがクオリティが全く違います。

ですが、生けた時間は同じく30分です。

しかし熟練者はその30分の裏に自身が生け花に携わってきた経験と時間が加算される。

そういった生け花の経験が重なり合って簡素な生け花が魅力的に生けられるようになります。

↑このように説明をすれば、ピカソを訪ねた、お嬢さんのような方にも簡素な生け花の魅力が伝わるのではないかと思います。

ちなみに私は制作時間+経験の加算を「花の礎(はな の いしずえ)」と呼んでいます。

まとめ

今回は簡素な生け花の魅力を伝えることに焦点を当ててピカソの逸話をお伝えしましたが、この逸話は人間の経験が絡むこと全てに言えると思います。

生け花であればすべてのスタイルに共通する話だと思いますので指導者の方であれば生徒さんが迷っているときに背中を押す言葉として、自分自身が花に迷っている時は自信を持つための言葉として役立てていただけましたら幸いです。

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ふらいけ
この記事を書かせていただきました。 華道家をしている「ふらいけ」と申します。